給与計算
休日と休暇の違い [ 2017.11.23 ]
「休日」と「休暇」には、実は明確な違いがあります。
労働基準法の定義によると「休日」は労働義務がない日、「休暇」は労働義務のある日に労働が免除される日です。
休日は、労働基準法により「週1日、または4週につき4日」与えなければならないとされています。これを法定休日といいます。
また、週40時間制を守るためには週1日では実質足りないことが多いため、それ以外の休みを設定します。これを「法定外休日」と言います。
休日は「そもそも働く義務がない」わけです。
一方、休暇とは「本来は働かなければならないが、労働者が権利行使することで働かなくてもよくなる」日を言います。
代表的なものは「年次有給休暇」で、法律により権利が保護されます。
休暇中の給与ですが、有給休暇を除いて、有給にしなければならない義務はなく、無給とすることが法律上は可能です。
ただ、慶弔休暇などは、事情が事情なので有給とすることが多いかもしれません。
代休と振替休日はどう違うか
また、別によく似た言葉で「代休」と「振替休日」も違います。
代休は、「休日に働いた代わりに与える別の休日」で、振替休日は「あらかじめ勤務日と休日をチェンジしたことによる休日」を言います。
振替休日の場合は、労働をした休日は、勤務日とチェンジしているだけなので、給与については通常の労働日と同じです。一方で代休の場合は、労働をした休日は「休日労働」扱いになり、割増賃金の対象となります。
賞与は必ず支払う必要があるのか? [ 2017.07.30 ]
賞与は、江戸時代に商人が盆と年末に奉公人に対して支払った「氷代」「餅代」がルーツとも言われています。
季節の節目節目に何かと金が入用であるため、奉公人に対して恩恵的に支払っていたのでしょう。
さて、現代において賞与は必ず払わなければならないのでしょうか。
【原則: 払うことが決まっているならば義務となる】
労働基準法上では、賃金については毎月一定期日に毎月1回以上支払うことが規定されていますが、賞与についての支払い時期については具体的には定められておりません。つまり、賞与を年2回必ず支払う義務というものは法律上はありません。
うちの会社は賞与ゼロである、と決めても問題はありません。
ところが、就業規則などに規程されている場合には支払う必要が生じてきます。
就業規則の賃金規程などで支払うことが明記されている、または雇用契約書にボーナスの支払いが明記されているならば、
それは賃金債権となり、会社が業績不振で支払わない場合は「ボーナスを払うという債務の不履行」となり、契約違反になるわけです。
賞与について就業規則において定める際には「業績次第では賞与を支払わない場合が存在ある」と定めている企業が一般的です。
【社員の中に払いたくない人がいる場合】
賞与が貢献度に比例して支払われるとしたら、貢献度が低い、またはないという評価の社員には賞与を減額し、または支給しない場合もあるでしょう。
この場合も、就業規則などにその旨規定しておく必要があります。
査定期間と支給の関係
賞与が業績や貢献度によって決まるならば、その査定期間も特定されるべきでしょう。
査定期間の特定をした時に、「査定期間にはいたけれど、支給日当日には退職する社員」もいるかもしれません。
会社としては、やめて行く社員に賞与を払いたくないという心理が働くこともあるでしょう(賞与には、来期への期待料も含んでいるため)。
その時には、「賞与は支給日現在在籍していない人には支払わない」という条件を就業規則で規定しておくと良いでしょう(支給日在籍要件)。
インフルエンザ等感染する病気にかかった社員への対応 [ 2016.12.04 ]
体調不良により急に仕事を休む社員がいると現場に支障をきたしますが、インフルエンザ等感染する病気にかかった場合など、他の従業員に伝染しないように無理に出勤させず休ませた方が良いこともあります。インフルエンザなどで社員を休ませた場合、賃金等の処遇においてはどうすれば良いでしょうか。
法定伝染病とそれ以外では対応が異なる:
法定伝染病の場合、労働安全衛生規則第61条第1号において「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾患にかかった者」については「その就業を禁止しなければならない」と定められています。言い換えると、会社は病気の拡散を防ぐために病気の社員を出社させてはいけないということです。
<病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾患>
結核、梅毒、淋病、トラコーマ、流行性角膜炎
上記に準ずる伝染性疾患(感染症予防法18条)
一類、二類、三類感染症の患者※
※エボラ出血熱、ペスト、鳥インフルエンザなど
これらの病気については、法律で出社させてはいけないと定められているため、当然に給与の支払い義務はありません。また、会社都合で休ませた時に発生する「休業手当」の支払いも不要となります。
インフルエンザは対象外
ところがインフルエンザ等(はしか、風疹、ノロウイルス等)は、感染症予防法の分類上、就業禁止の対象となるべき法定伝染病には該当しませんので、会社ごとに対応方針を決める必要があります。
通常は病気が社員へ拡散することを防ぎたいでしょうから、休業を命じることになるでしょう。その場合会社都合による休業になります。したがって、最低でも休業手当(平均賃金の60%)の支払いが必要となります。
もっとも、有給休暇を当人が取得して100%給与を受け取る権利もあります。
法定伝染病とそれ以外では就業禁止の根拠及び賃金の支払いの取り扱いが違うので注意が必要です。
年末調整について [ 2016.11.23 ]
年末調整とは
会社が従業員の1年間の給与(1月から12月)を基に所得税の額を計算し、毎月の給与から引いていた所得税との過不足精算をすることを言います。所得税は、給与ではなく所得(収入―必要経費)にかかる税金ですので、従業員の必要経費を把握する必要があります。
年末調整の対象となる人、ならない人は主に以下の通りです。
(1)対象者となる人
・1年間を通じて勤務している人
・年の途中で就職し、年末まで勤務している人
・12月中に給与の支払を受けた後に退職した人
・年の途中の海外転勤等により、日本に住んでいない人
(2)対象とならない人
・1年間の給与収入が2,000万円を超える人
・年の途中で退職した人(死亡や心身の障害による退職者は除く)
・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してない人
・2か所勤務者で、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を他の会社に提出している人
年末調整ができない項目
会社で年末調整を行っていても、以下に該当する人は自身で確定申告をする必要があります。
・1つの会社から給与を受けていて給与や退職金以外の所得合計が20万円を超える人
・2つの会社から給与を受けている人
・高額な医療費を払っている人
・寄付をしている人
・住宅ローンを受けた最初の人。
会社が従業員から集めるべき書類
年末調整を行うためには、主に以下の書類を集める必要があります。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
②給与所得者の配偶者特別控除申告書
③給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)
④給与所得の源泉徴収票(途中入社で前職がある人)
年末調整時の過不足精算を12月給与で行う会社が多いと思います。従業員からの書類は11月中を目途に配布及び収集をし、余裕を持って計算するようにしましょう。
給与からの天引きについて [ 2016.07.19 ]
従業員に支払う給与を計算する際、税金などを"天引き"して、金額を決定します。その天引きには、どのような法的根拠やルールがあるか、きちんと押さえておくと、トラブルの防止に役立ちます。
法定控除について
まず、法によって納付が義務付けられているために、会社が労働者の了解を得ることなく天引き(控除)することが認められている費用があります。「法定控除」と呼ばれるものです。具体的には、以下の3項目があげられます。
・税金(所得税、住民税)
・社会保険料
・雇用保険料
これらは公的な制度であることが知られていますから、特に問題視している方はいないでしょう。
法定外控除について
注意したいのが、法定控除以外の名目で給料からの天引きを行う場合です。これについては、その内容を労使協定で定めておかなくてはいけません。労使の合意なしにレクリエーションのための親睦会費などを、勝手に天引きすれば違法行為となります。天引きする内容も、従業員の福利厚生に資するものに限られます。
親睦を深めることを目的とした社員旅行を計画し、その準備の一環として、積立金を控除する場合などは、問題ないでしょう。その一方で、業務上必要な備品や研修にかかる費用などは、原則として会社が負担するものと考えられているので、注意が必要です。
労使協定を結んでおくことは大前提ですが、新入社員や中途入社をする社員に向けて、入社手続きなどの折に、きちんと周知しておくことも重要です。天引きされている費用の内容・性質を、労使とも理解しているよう努めたいものです。
会社の都合で休ませた場合の休業手当について [ 2016.04.21 ]
会社の都合で休ませた場合の休業手当について
労働者本人の体調不良や家庭の事情で会社を休む場合、多くは「ノーワークノーペイ:働いていない部分の給与支払いはなくてよい」という原則の通り無給として処理しますが、その休みの原因が会社にある場合は、少し違う対応をする必要があります。
会社の都合による休みとは、例えば以下のようなケースがあります。
1、不景気だから工場の稼働を一時的に停める場合
2、社内の不正について調査するとき、証拠隠滅防止のため関係者に自宅待機を命じる場合
3、採用内定者について、業績の悪化のため予定通りの日付から勤務開始させられず、自宅待機をさせる場合
このような場合は、労働基準法の定めによる「休業手当」を支給しなければなりません。
休業手当の計算式は以下の通りです。
平均賃金 × 60% 以上
平均賃金は、原則として事由発生日前3カ月の給与総額を暦日数で割って計算しますが、その額の6割以上を「働いていなくても」負担しなければならないということです。
ちなみに、「伝染病にかかった社員に自宅待機させる場合」、「台風などで交通機関がストップした場合」「大きな災害があった場合」など、会社側の都合かとうかの判断に迷う場面については、有給の取得を奨励するか、社労士などの専門家に意見を求めるとよいでしょう。
賃金直接払いの原則について [ 2016.02.02 ]
賃金を受け取る時、会社と労働者との間に仲介人等が間に入ると、労働者に対する賃金が本人に渡らない可能性が出てきます。そこで労働者の「賃金をもらう権利」を守るために、この「直接払いの原則」が設けられています。
例えば労働者が未成年の場合など、親権者などの大人によってお金が消費され、本人の手に渡らないなどの問題が出てくるかもしれません。直接払いの原則はこのようなことを防ぐ目的があると言えるでしょう。
賃金の支払いにおいては,直接払いの原則により,親権者などの法定代理人はもとより,労働者の任意代理人に賃金を支払うことも禁止されています(ただし、労働者の妻に手渡すなど、単なる使者である場合、賃金債権者が税金の滞納などにより差し押さえ処分を受けた場合など、一部例外的に認められることもあります)。
ちなみに賃金をもらう権利(賃金債権)を債権譲渡することはできます。しかし,その場合であっても,使用者は労働者に対して賃金を直接支払わなければならないとされています。したがって、賃金はあくまで労働者本人に渡すものと心得ていた方がトラブルが少ないでしょう。
直接払いの原則に違反した場合
使用者が直接払いの原則に違反した場合,刑事罰としては,使用者は30万円以下の刑罰を科されます(労働基準法120条1号)。
賃金については、それがたいていの労働者にとって唯一の収入源であるため、それが本人の手に渡らないことがあればその人の生活が脅かされてしまいます。そのため厳しくルールが定められていると覚えてください。
労災または通勤災害による休業補償(最初の3日)について [ 2016.01.22 ]
業務上の事由または通勤により怪我をして仕事が出来なくなった場合、休業の第4日目以降は労災保険から休業に対する補償(概ね給与の8割)があります。
別の言い方をすると、休業初日から3日間は労災保険から休業補償されないことになります。この3日間に関するケアについて、業務(仕事中の)災害と通勤(途中の)災害とで、取り扱いが違います。
◆業務災害の場合
休業初日から3日目については、労働基準法により「会社が」平均賃金の60%の補償をしなければなりません。
そもそも、労働基準法では労災で仕事が出来ないために賃金を受けない場合、会社が休業補償をしなければならないのですが、休業4日目からは、労災保険がその補償を行うので、3日目までは会社が支払い、4日目以降は会社からの休業補償は労災保険からされる、という関係になっています。
◆通勤災害の場合
通勤災害は労災ではないので、労働基準法上、事業主には休業に対する補償責任がありません。よって、業務災害と異なり休業初日から3日目までの休業に対する補償を事業主がする必要はありません。
ちなみに、この3日分の休業補償について所得税法上は非課税となっています(一方で、会社の都合で休ませた場合に市はらう「休業手当」については課税対象となります)。また、労働保険の年度更新をするときには賃金とはみなされません。
休業補償を支給する場合の給与計算については専門家に相談しましょう。
「嘱託社員」「再雇用社員」の賃金を定年前よりも低くすることができるか? [ 2015.12.23 ]
定年間際の社員は、勤続年数が長いこともあり、給与額も高いことが多いでしょう。定年後嘱託や再雇用社員になったときに、そのままの給与を維持すると、高齢者に対する人件費が高くつくことになり、企業の若返りなどの点で問題が出ることがあります。
定年再雇用を機に給与を低くすることができるのでしょうか。
原則は当事者同士で納得すれば低くできる:
原則としては会社と当人が納得すれば、定年を機に給与を低くしても構いません(ただし最低賃金以下にすることはできません)。定年により雇用契約はいったんリセットとなるので、そのあとの契約内容は当事者同士で自由に決めることができます。
実際に60歳以降は公的年金も支給され始め(今後は65歳以降の支給に引き上げられます)、その他民間の保険の満期設定をしていることも多く、その他の所得が確保されていれば賃金を低く改定することにも抵抗は少ないかもしれません。ただし、これまでに再雇用制度が存在しており、ある程度、「定年後はこのくらいの賃金になる」という基準が存在するにもかかわらず、これに反して、賃金を下げる場合には、「労働条件の不利益変更」の問題が出てきます。他の人との公平性を考えて慎重に決定する必要があります。
なお、60歳を境に賃金が下がった場合、雇用保険から高年齢雇用継続給付金という給付が支給されることがあります。概要としては、①60歳を境に②5年以上の雇用保険加入期間がある人が③従前の75%未満に給与が下がった場合、一定額の給付を雇用保険から行うことにより所得が保障されます。
給付される予定の年金、満期保険金、給与、雇用保険給付、本人の家計事情、他の社員の給与水準などを総合的に検討して問題のおこらない金額設定を心がけてください。
通勤手当の非課税限度額について [ 2015.12.10 ]
通勤手当は実否弁償的な意味合いが強いため、本人の所得を計算する上では非課税となります。
ただし、近所から通勤する社員に多額の通勤手当を支払うなど、本来かかるであろう実費を超えて支給している場合は、名前が通勤手当であっても全額非課税とされないことがあります。
通勤手当の非課税限度額については通勤方法別に以下のような基準が決まっています。
1、交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当
⇒1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 100,000円)
2、自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当
通勤距離が片道55キロメートル以上である場合 31,600円
通勤距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満である場合 28,000円
通勤距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満である場合 24,400円
通勤距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満である場合 18,700円
通勤距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満である場合 12,900円
通勤距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である場合 7,100円
通勤距離が片道2キロメートル以上10キロメートル未満である場合 4,200円
通勤距離が片道2キロメートル未満である場合 (全額課税)
3、交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券
⇒1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 100,000円)
4、交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券
⇒1か月当たりの合理的な運賃等の額と2の金額との合計額(最高限度 100,000円)
つまり、電車やバスの定期券や定期代は10万円までは非課税ですが、車やバイク、自転車などを使用する通勤については「距離によって」非課税限度額が設定されています。
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