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2013年1月

管理監督者について   [ 2013.01.29 ]

残業代不払い、サービス残業問題において、たびたびクローズアップされる問題として、いわゆる「管理監督者」に対する残業手当が固定的な手当以外に別途必要か否かを争うことがよく見受けられます。

この問題における解釈、争点となる部分を以下に解説します。

各会社における「管理監督者」という位置づけは否定されるものではありませんので、法律上の解釈と区別して理解していただきたいと思います。

 

「管理職には残業代を支払わなくてよい」と考えている人が多いように思いますが、実際はどうなのでしょうか。

 

【法律根拠】
労働基準法では、第41条で「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます)については、「労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない」となっています。

週40時間・1日8時間といった労働時間の制限や、週1日は休日を与える義務があるといった労働基準法の規定が適用されません。つまり、管理監督者には、この条文を根拠として「時間外労働手当や休日労働手当を支払わなくても良い」ということになっています。管理者は「経営者と一体的な立場」にあって、自分自身が労働時間についての裁量権を持っているので、労働基準法で保護する対象としてふさわしくないからというのが理由です。

 

【管理監督者にあたるかどうかの判断】
よく誤解されていますが、「役職がつけば管理監督者」ではありません。役職名・肩書きには関係なく、実態で判断されます。通達によると、管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。具体的には以下4つを基準として判断されます。

<1. 重要な職務と権限が与えられていること>
企業の経営方針や労働条件、採用の決定に関与していて、経営者と一体的な立場にあることが求められます。例えば「採用決定に関与している」「社員の人事考課の重要な決定をなす」「社員の勤怠管理を担う」「経営戦略などの作成に関与する」などの職務を行っているかどうかで判断されます。

<2. 出退勤について管理を受けないこと>
始業・終業時間を拘束して、遅刻・早退の際に給与を減額したり、懲戒処分の対象としているような場合は、自由裁量がないと判断されて管理監督者とは認められません。ただし、管理監督者であっても深夜勤務手当の規定の適用は除外されていませんので、タイムカード管理をしているだけで管理監督者として認められないとは限りません。

<3. 賃金面で、その地位に相応しい待遇がなされていること>
管理監督者という立場にふさわしい給与が支払われているか否かも判断のよりどころになります。通達でも「定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等」とあります。

<4. 現場に出て他の一般労働者と同様の業務を行っていないこと>
管理監督者として「監督される側」の作業を行っていることは、管理監督者でない根拠を強める事になります。例えば、工場長だがラインに混じって作業をしている場合は管理監督者として認められない可能性が高いでしょう。

以上の3つの点について総合的にみて、管理監督者であるかどうか判断されます。以上の事から、日本の労働環境に置いては「管理監督者として認められる管理者はほとんどいない」と言えるでしょう。

みなし残業手当、残業手当の内払い等、実態に合わせた対処方法もございますので、ご一考ください。

 

 

資格取得費用の返還請求について   [ 2013.01.24 ]

従業員のキャリア形成、早期育成を目的として、業務上必要となる資格を会社負担において、取得をさせるケースは非常に多く見受けられます。

当該従業員が会社に定着し、想定通り資格を活かして重要な戦力となった場合は良いのですが、予想に反して戦力化する前に自主退社してしまうケースも間々見受けられます。

このテーマについてのご質問は、非常に多いと実感しております。

下記に対応策、考え方を記載します。参考にしてください。

 

従業員の資格取得費用を会社が負担したが、会社の期待に反して早期に退職した場合、費用の返還請求はできません。従業員の勤続を促すために「資格取得費用貸付制度」などの導入を検討しましょう。

 

【根拠】

  • 労働基準法第16条・・・会社は、労働契約の不履行について、違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約を結んではならない
  • 労働契約の不履行と違約金

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<ケーススタディ>
従業員が業務を遂行するために取得した資格の全費用を会社が負担して取ることとなった。

これにあたり、会社は「雇い入れ1年以内に自己都合で退職する場合には、会社が負担した費用を変換すること」という特約を労働契約に追加したが、半年後に家の事情で退社した。

そこで、会社は資格取得に要した費用の返還を求めた。
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上記の場合、会社が労働契約に追加した「退職する場合は費用を返還すること」という特約そのものが無効で、従業員はお金を返す必要はありません。

 

労働基準法第16条では、「金銭をいわゆる足かせとして、労働者を拘束してはならない」ということを言っています。このケースの特約は「不履行について違約金を定める契約」に該当し、従業員を不当に拘束する恐れがあるため認められません。

ただし、下記の場合、第16条に抵触しないとされます。

  1. その費用の計算が合理的な実費であること
  2. その金員が会社の立替金と解されるものであること
  3. その金員の返済により、いつでも退職が可能であること
  4. 返済に関する約定が不当に雇用関係の継続を強制しないこと

 

【資格取得費用の貸付制度】
上記のトラブルを防ぐために、資格取得費用を「会社が負担する」のでなく、「無利子あるいは低利子で貸し付ける」という制度を導入することができます。

この場合、以下のような定め方をします。

  • 本人の自由意思に基づいて資格取得費用の借り入れを申し込む
  • 申込に応じて会社が費用相当額を貸し付ける(金銭消費貸借契約の締結)
  • 一定期間勤続することを以って、その「返済を免除する」規定を設ける

この場合は、労基法第16条に抵触しません。

退職時の一括有給取得について。   [ 2013.01.19 ]

私どもの関与先企業においても、年に何度かタイトルに関連するお問い合わせをいただきます。

特に中小企業においては、人員をギリギリに抑えて運営している場合がありますので、なかなか計画的に有給休暇が消化されていない傾向が見受けられます。

そんな中で、退職希望者より「有給休暇残日数をまとめて消化してから退職したい」という申し出がなされることが多々ございます。

関連記事を以下に記載します。参考にしてください。

 

会社は、退職者が残っている年休をまとめてとることを拒むことはできるのでしょうか。

 

原則として有給休暇取得は拒否できませんので、指定に従って与えなければなりません。ただし、引継ぎ不備などの明らかな不利益があった場合、別にペナルティーを与えることは可能です。

 

【時季指定権・時季変更権の前提】
有給休暇については、原則として会社は社員が請求するだけの日数を与えなければなりません。これを労働者が持つ「時季指定権」といいます。一方、有休取得が会社の正常な運営を妨げる場合は、有給休暇を別の日に変更する権利があります。これを会社の「時季変更権」といいます。時季指定権と時季変更権のうち、どちらの言い分が優先されるかは、個別の有休取得案件によって異なります。

では、退職する社員について、会社は時季変更権を使うことはできるのでしょうか。

時季変更権は、あくまで「ほかの時期には休暇を与えること」が前提となっています。会社を辞めた人間には、休暇を与えることはできないため、退職する社員には、時季変更権は使えないと考えられます。

本来、年次有給休暇とは「労働者に賃金を得させながら、一定期間労働者を就労から解放することにより、継続的な労働力の提供から生ずる精神的肉体的消耗を回復させるとともに、人たるに値する社会的文化的生活を営むための維持・回復させる」ものです。

会社としては、辞めることが決まっている社員には労働力の維持・回復を期待する必要もなく、むしろ、残りの期間は休まず出勤して十分な引継ぎを行ってもらいたいと考えるでしょう。しかし、年次有給休暇は一定の要件を満たすことにより当然に発生する労働者の権利です。この権利を使うことを会社が一方的に制約することはできません。

 

【有給休暇を買い上げることはできるか】
会社は原則として、社員の請求するだけの日数を与えなければなりません。ただし、法定の休暇日数を上回る部分があるとすれば、その部分については就業規則などの規定にもとづいて、買い上げるなどの方法をとることが可能です。

たとえば、労働基準法で定める最低に日数が10日の者に対して、15日が付与されているような場合には、5日分を買い上げの対象とすることができるのです。

広告と別条件での労働契約について   [ 2013.01.16 ]

年末から年初にかけて、入退社の動きが出てきました。

同時に採用活動にも動きが出てきますので、お客様方からのハローワークへの求人票作成依頼を多くいただいております。

年に何度かご質問を受ける話題があります。

 

「求人広告と異なる条件で労働契約を結ぶことは可能でしょうか?」

 

結論から申し上げますと、できないことではないということです。ただし、とてもデリケートな問題なので慎重に対応していただきたいところです。

以下に記載しますので参考にしてください。

 

【広告掲載の条件は見込みである】
求人広告に記載された賃金額はあくまでも見込みであり、必ずしも広告どおりの労働条件で受け入れる必要はありません

 

【労働契約申し込みの誘引】
一般に会社が社員を雇い入れようとする際には、新聞や求人雑誌に求人広告を出したり、ハローワークに求人票を提出したりします。当然これらには、求職者が応募するかどうかを検討するために賃金や労働時間などの条件を提示します。

こうした募集にかかわる行為は、法的には「労働条件申し込みの誘引」と考えられ、求人広告などを見て求職者が応募する行為は「契約の申し込み」となります。そして、この契約の申し込みを受けた事業主が、採用面接などの段階をへて採用を決定した時点で、はじめて労働契約が成立します。

つまり、求職者が応募してきた時点では、まだ労働契約は結ばれていないのです。

 

【実際の条件が違いするのは問題である】
求人広告で示した条件で雇い入れる必要はないとしても、求人者は提示された条件を判断材料として応募したのですから、あまりに条件が違いすぎることも問題です。

ですから、広告や求人票などの条件は一応の目安であるといってもなるべく実際の労働条件もこれに合わせることができる程度に柔軟な対応をするのが望ましいといえます。

実際の判例でも、求人広告は就職申し込みの誘引なので、採用面接で広告の賃金額を異なる合意があれば「労働者を保護する特別の事情がない限り、その合意に従って賃金額が決定される」とされており、広告の条件と面接で合意した条件が異なることは何ら問題がないとされています。

求人者は、「むやみに、求人票記載の見込み額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではない」ということを覚えておきましょう。

 

 

「パワハラ」と「熱血指導」の境界線   [ 2013.01.13 ]

このホームページを公開する以前より「事務所だより」を発行しているところですが、
「事務所だより」は弊所顧問先に限定して送付しております。

そこで「事務所だより」掲載記事の中でも、反響が多かった記事について、コラムで
も紹介して、多くの企業様に活用していただきたいと考えております。

今回は「パワハラ」と「熱血指導」の境界線をテーマに記載します。参考にしてください。

 

【パワハラの定義】
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを以下のとおり定義付けています。

--------------------------------------------------------------------------------------------
同じ職場で働く者に対し、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、
業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

--------------------------------------------------------------------------------------------

優位性とは職場における役職の上下関係のことではなく、当人の作業環境における立場や能力
のことです。つまり、部下や同僚であっても相手に対して何らかの優位性を持っていると客観的に
認められる場合は、パワハラの行為者・加害者になり得るのです。

[パワハラ行為の具体例]
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可 能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや
   仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)など

この定義によると、パワハラを巡る労働問題は、特に以下の2つが重要な争点となります。

1. 争点とすべき事実の有無と程度
2. 業務の適正な範囲を超えているか否か

「パワハラ」と「熱血指導」の境界線過去に、「お前はバカか」「給料泥棒」「目障りだ」などの上司
の暴言を要因とした労働者の自殺が、パワハラとして労災認定されたケースがありました。しかし、
だからといって「暴言は一切してはいけない」ということなのでしょうか。異なるシチュエーション
における比較をしてみましょう。

--------------------------------------------------------------------------------------------
【ケース ①】
昼休み明けの5分の遅刻昼休みから帰ってくるのが5分遅れたということで、
「お前はバカか!」と上司が執拗に叱責した。

【ケース ②】
重要な商談への5分の遅刻重要な取引先との商談に5分遅れたということで、
「お前はバカか!」と上司が執拗に叱責した。
--------------------------------------------------------------------------------------------

上記のケースはいずれも「ささいな遅刻」という労働者の行為に対する暴言ですが、その業務上
の重要度に差があります。仮に裁判でパワハラ行為について争うことになった場合、ケース①よ
りもケース②のほうが上司の暴言に業務上の合理性があると見なされると予想できます(もちろ
ん暴言そのものが肯定されるという意味ではありません)。

つまり、言葉の内容よりも状況が大切だということです。

近年は、「パワハラ行為だと糾弾されることを恐れるあまり、消極的で実のない指導しかできない」
という現場の上司の声もあります。パワハラ問題は、どちらかに偏ることなく、状況を踏まえたバラ
ンスある判断をすることが必要です。

給与の締め日支払日は会社の任意に変更できるか   [ 2013.01.07 ]

皆さん、こんにちは。

毎月の給与計算において、月末締の翌月5日または10日支払という形態は非常に多いので、年初の稼動日にタイムカード等の勤怠を集計し、給与計算していたのでは、給与振込みに間に合わないという事態が発生します。

暦の月単位で給与を締め切り、10日頃に支払日を設定するのは経営者も労働者も大変わかりやすく、動かしがたいものがあります。

ただ、毎年この時期にだけ悩ましく感じられる経営者の方も多いのではないでしょうか。

それぞれの会社で、現在ムリなく処理できている方法はひとつの正解です。

今回は、またひとつの考え方として「給与の締め日支払日は会社の任意に変更できるか」というテーマで下記に記載いたします。参考にしてください。



賃金については「毎月1回以上、一定期払い」をしなければなりませんが、その要件を満たす限り、給与締め日支払日の変更は可能です。
給与の締め日支払日を変更するだけであれば、給与の減額等の労働条件不利益変更を伴わないからです。

ただし、給与の支払日を後のばしにする場合は、若干のケアが必要です。
従業員のなかには、毎月の給与から住宅ローン、クレジットカード決済、車のローン等各種支払いをしている人もいます。
その引き落とし時期に給与支払日変更が影響を及ぼす場合は、一時払いなどの対応をしてあげましょう。

例:
毎月15日締め、月末支払いの会社が、毎月末日締め、翌月15日払いに変えたい場合

既往の労働に対しての賃金はいったん月末に支払い、翌月15日に新支払日に基づき半月分を支払う。
従業員の中でローン等の関係で月末支払いが多い者には給与前払いや貸付制度を整備する。


この場合の社内貸付制度を導入する場合は、会社の都合での給与支払日変更ですから、利息などは付さない方がよいでしょう。

給与に関する事項については従業員を無視せずに、個別の事情に応じてスムーズな移行・変更を行ってください。


本年もよろしくお願い申し上げます。   [ 2013.01.04 ]

所長よりあいさつ

 

明けましておめでとうございます。所長の小川でございます。 

旧年中は格別のご厚誼を賜り、深謝申し上げます。本年も皆様からの負託にお応えできるよう、

 スタッフ一丸となり業務に邁進してゆきます。どうぞよろしくお願いいたします。 

 

さて、弊所では所内全体における今年一年間の目標を立てております。 

今年は「申請書類の電子申請化」を重点的に取り組んでゆきます。

それは、役所向けの書類作成・提出業務は、可能な限り電子申請できる体制に移行してゆくと

ものです。 

 

事務処理の効率化、時間の有効活用などを図り、昨年から掲げております「スモール・オフィスの

お手本」となる事務所作りをさらに推し進めてゆく所存です。

効率化により生み出された時間は、より一層お客様方とのコミュニケーションを深める時間や業務

研究にあてる時間として活用し、弊所の提供する「労務管理」の質を高めてゆきたいと思っております。 

 

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

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