2013年5月
外部の労働組合と団体交渉には応じなければならないのか? [ 2013.05.28 ]
私どもが主に関与している中小企業においては、労働組合が組織されている会社は非常に稀です。
しかし、近年では個人で加入できる労働組合「ユニオン」に加入し、労働条件や給与未払い等の問題について団体交渉を求められる事案が増えてきております。
そこで、今回は外部の労働組合から団体交渉を求められた場合の対応について以下記載します。参考にしてください。
まず、労働組合とはどのような団体かを説明します。
「労働組合」とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他の経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合会」と労働組合法で定められています。つまり、労働者の権利保護や働く環境の改善のために団結した集団ということになるでしょう。また、「団体交渉」とは、労働組合が会社と労働条件等について交渉する行為を指します。
通常は「団体交渉申入書」という書面が会社に送られることで団体交渉が始まることになります。
交渉拒否ができるか:
団体交渉を求められた場合、使用者は正当な理由なく拒むことができません。団体交渉を特に理由なく拒むことは「不当労働行為」として法律上禁止されているからです。
さらに、労働組合の構成員は自社単一の社員に限るという定めはないので、加入者に自社社員がいれば、外部の労働組合の交渉も応じなければなりません。
では、解雇された元従業員が労働組合に加入し、団体交渉を求めた場合はどうでしょうか。元社員なので「雇用する労働者」とは言えません。
しかし、不当解雇で争っている場合や、未払い賃金等で争いがある場合には、その範囲で「雇用する労働者」とされます。よって元社員であっても、使用者は団体交渉に応じる義務があります。
団体交渉を拒否した場合:
団体交渉を拒否すると、労働組合は労働委員会に団交応諾の救済申立が出来ます。この申立を受けた労働委員会は、労働組合が法に適した団体であり、当該会社の労働者がその組合に加入していれば、会社に対して救済命令を出します。
したがって、結局、団体交渉に応じなければならなくなります。
団体交渉のすすめかた:
会社側は最初から弱腰にならず、法律違反事実を確認し、改善策を見出す努力が必要です。法律違反については正す努力をしつつも、あまり感情的にならず、論理的に話を進めるように心がけましょう。なかなか交渉がまとまらない場合は、ADR等、第三者の専門家も交えての紛争解決手段を利用するのも良いでしょう。
休職を繰り返すうつ病社員を退職させられるか? [ 2013.05.22 ]
私傷病による「休職制度」は法律上の義務ではなく、会社のルールで任意に定めることが出来ます。休職からの復職についても同様に会社独自のルールを適用させることができます。
休職させるべきか否か、復帰可能か否かについて、外傷であれば治癒状態が判定しやすいですが、ことに精神疾患の場合は、回復の判断が難しく、再発することが少なくありません。そして精神疾患、いわゆるうつ病については、近年休職を巡るトラブルが多くなっていますので、特にこれらの反的基準を休職制度上で整える必要があります。
例えば、「精神疾患が再発したかどうか」を判断する上で、休職者・または休職者のかかりつけの医師の意見のみを拠り所にした場合、休職者の側の利益に偏った診断書が出てくることも想定できます。こうなると、再発の度に短期間の休職何度も繰り返され、会社は労働力を提供されていないにも関わらず社会保険料その他福利費を負担し続ける事態にもなりかねません。
【解決方法】
休職に対するルール作りとしては以下のようなことが考えられます。
①復職の扱いを慎重にする
・就業規則に、私傷病で休職していたものが復職する場合に下記趣旨の文言を入れると良いでしょう。
・会社が指定する医師への受診を命ずること
・復職を本人の申告制でなく、人事部長等の許可制にすること
②再休職を前休職期間と通算する
・復職したものが復職後短期間に同一理由で就職した場合、前回の休職と通算する
・通算により、残期間を休職の限度とする
このような趣旨の規定があれば、前後の休職期間を通算することが出来ます。例えば、休職期間満の上限が3ヶ月であった場合、1ヶ月後復職し、再度類似の傷病で休職したものを「病気がなおっていなかったもの」と取扱い、休職期間のカウントを通算することが可能です。規定がない場合、休職期間が通算されず、いつまでたってもゼロからカウントしなければなりません。また、「休職満了後になっても休職事由になった私傷病が回復しておらず、従前の職務に復帰できない場合には、自然退職とする」旨を就業規則に定めておけば、解雇でなく休職期間満了による自然退職との取扱いになります。
いずれにせよ、休職に係る規定は整えておく必要があるでしょう。
「王子」改め「オヤジ」・・・ [ 2013.05.18 ]
王子が我が家にやってきてから、早5年。
ネコの5歳というのは、そろそろ中年のようです。
家から一歩も外に出したことがなく、温室育ちで警戒心のカケラもない王子は、「食べる」「寝る」
の2パターンの繰り返しで日々暮らしています。
家では文字通り「猫かわいがり」に育てているので、まったく野生を失ってしまった気配です(笑)
最近、写真のような姿もよく見ます・・・
お腹を出して、下腹をボリボリ掻いているオヤジと化したイチローくんは、もはや「王子」とは呼べ
なくなってしまいそうです(哀)
ま、それもまたカワイイと思ってしまうところが親バカな私です。
次は凛々しい姿を投稿したものです。頼むよ王子。
裁判員制度について [ 2013.05.17 ]
私どもの関与先では、まだ事案を聞いておりませんが、裁判員裁判制度がスタートして以来、誰もが裁判員に指名を受ける可能性があり、その際の会社における労務管理、規定、給与の支払いに関しての取り扱いをどのようにしたら良いか?というご質問を受けることが増えてまいりました。
今回は、社員が裁判員に選出された場合の取り扱いについて、下記にまとめてみました。
参考にしてください。
【Q】従業員が裁判員に選出された場合、どのように取り扱えばよいか?
【A】裁判員に選出された場合、原則として拒否できないため、会社は公務に必要な休暇を与えなければなりません。但し有給にするか無給にするかは会社毎に定めることができます。
(解説)
平成21年5月21日から、裁判員制度がスタートしました。
裁判員制度とは、殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪といった、一定の重大な犯罪における刑事裁判で、事件ごとに無作為に選ばれた国民が、裁判員として裁判官とともに審理に参加する、日本の司法・裁判制度をいいます。
20歳以上の国民であれば、だれしも裁判員に選出される可能性がありますが、この裁判員に選出された場合、原則としてこれを拒否することはできません。
(※ただし、義務教育を修了しない者、禁錮以上の刑に処せられた者、一定の公務員・法曹など法律関係者・警察官、くわえて被告人・被害者の関係者、事件関与者、さらに直近の裁判員従事者など、一定の者は除かれます。)
単に「仕事が忙しいから」という理由で、制度への参加を拒否することはできず、正当な理由なく拒否した者については、罰金や過料の罰則規定が適用されることがありますので注意してください。
(取扱い方)
労働基準法第7条は、労働者が「公の職務を執行するために」必要な時間を請求したときには、使用者はこれを拒んではならないとしています。
裁判員としての裁判への参加はこの「公の職務執行」に該当するため、裁判員制度参加に係る休暇を与える必要があり、またこれを理由として使用者が労働者に対して解雇その他不利益処分をすることはできません。
(賃金について)
裁判員として裁判に出席した者には、法で定められた一定の旅費や日当が支払われますので、会社が休暇を与えたその日の分まで、必ずしも有給扱いにする必要はありません。
ただし、有給休暇扱いをしない場合にはその旨就業規則上に定めておくほうがよいでしょう。
減給の制裁について [ 2013.05.10 ]
従業員が会社内で不良行為等を行った場合に、給与の減額による懲戒をしたいというご相談を受けることがあります。
具体的には、経営者の皆様から「減給はどこまでしていいのか?」という形でのご質問をいただきます。
今回はその質問に回答する形で、労働基準法上で決められている制約を以下記載いたします。
参考にしてください。
【Q】
減給制裁に上限はないのか。
【A】
上限はあります。制裁一回の額が平均給与の1日分半額の範囲内で、かつ総額が一カ月の給与月額の10分の1以内でなければなりません。
(解説)
【ノーワーク・ノーペイの原則】
ノーワーク・ノーペイの原則とは「労働なければ賃金なし」という原則です。会社は社員に給料を支払っています。社員は給料をもらう代償として、労務を提供します。このような双務契約ですから、労務の提供がない部分については、賃金を支払う必要はありません。
しかし、減給には上限があります。なぜなら、給料は社員の生活基盤を支えるものだからです。無制限に減給をしてしまうと、社員の生活が不安定になってしまいます。
減給の上限(労働基準法91条)
①1回の額が、平均賃金の一日分の半額を超えないこと
②一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の合計が総額の10分の1を超えないこと
※法定の上限を超える制裁は、超えた部分につき無効とされます。なお、遅刻や早退の時間に対する賃金を支払わないことは、「制裁」とならないので、制限はありません。
【例】20分遅刻した場合に月給の3分の1を減給した。
労働基準法違反で無効な処分となります。しかし、すべて無効ではなく、法定内の部分の減給は有効です。平均賃金の1日分の半額以内で、月給の10分の1以内の減給は可能となります。
→減給は効果的な制裁方法ですが、運用は慎重に行う必要があります。就業規則等制裁規定を設ける場合は、制裁される具体的な項目の適否を事前に調べておくと良いでしょう。また、減給規定については、その額についてきちんと定めておくことも大切です。
休日の出張旅行は休日出勤になるのか? [ 2013.05.06 ]
GW最終日です。私どもは本日から稼働しておりますので、よろしくお願いいたします。
さて、連休ということもありますので、今回は休日にかかる出張旅行が休日出勤となるか否か?について下記に記載します。参考にしてください。
使用者からの特別な指示がない限り、移動だけの旅行日は休日労働になりません。
(解説)
【移動時間=通勤時間】
移動時間は通勤時間と同じと考えられています。つまり、出張先までの移動は業務を遂行するために不可欠ですが、移動時間中は業務に従事しているとはみなされず、通勤時間と同じとされます。したがって、出張のために移動するだけの旅行日は、たとえ社員の休日であっても休日労働にはなりません。
【特別な指示とは】
しかし、移動中に貴重品を運搬したり、監視したりといった特別な指示があれば、移動時間も労働しているとみなされます。この場合、移動するだけの日も労働日です。
休日労働には36協定が必要です
会社が社員に休日労働を命じるには、36協定(労働基準法第36条の時間外及び休日の労働についての取り決め)の締結が必要となります。また、法定休日労働に対しては、通常賃金の3割5分増しの賃金を払わなくてはなりません。
→会社としては、なるべく休日にかかる出張をさせない等の配慮が必要です。なぜなら、休日に出張にかかる移動を命じられ、プライベートな時間を拘束された場合、出張をしていない同僚と比べて損をしていると感じる社員もいるかもしれないからです。たとえ法律的には労働時間に当たらなくても、感情的なことにも配慮したほうがトラブル防止になるでしょう。
やむを得ず命じなければならない時は、休日の振替を行うのが望ましいでしょう。また、出張手当(出張の必要費用を補填する目的で支払われる手当)などを支給するとトラブル防止につながります。
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