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社会保険料節減

「業務委託」とは何か?   [ 2015.04.03 ]

業務委託とは、書類上、形式的には「取引業者のひとつ」として業務を引き受ける形式ですが、実態としては雇用関係、つまり労働者であるものを言います。なぜ企業が労働者を業務委託と偽るかというと、次の理由が考えられます。

・労働者でないなら、残業代の支払いが不要になる

・労働者でないなら、社会保険加入が不要になる

・労働者でないなら、労災の責任所在をあいまいにできる

・労働者でないなら、労働基準法上の「解雇」という高いハードルを越えなくてもよい

つまり、企業側にとって経済的利益が大きいことが理由です。

業務委託関係と雇用関係の最大の違いは「発注者が指揮命令をすることができるか否か」です。指揮命令権の有無は具体的には以下の点を参考に判断されます。

1、仕事の依頼に対して引き受けた側が断ることができるか

2、仕事を進める上で本人の裁量の余地が相当程度あるか

3、勤務時間について発注者から拘束されるか

4、本人のかわりに他の者が労務提供することが認められているか(代わりがきくか)

たとえば美容室などでの業務を命じられている美容師の場合、形式的には業務委託契約であっても、①仕事は原則として断れない、②業務遂行について裁量の余地は少ない、③出勤簿などで勤務時間管理を受ける、④労務提供の代替性も認められていないという状況であれば、労働基準法上の労働者と判断される可能性が高いでしょう。

一方で、社会保険料や残業代の負担を想定しなくてすむ分、当人に高い報酬を支払うことができる可能性もありますから、いわゆる「仕事のできる人、あれこれ指示されたくない人」にとっては、業務委託という形式で働くことはメリットもあるかもしれません。

いずれにせよ書類上だけで業務委託契約を整えたことになりません。実際の仕事の命令の方法や業務の管理実態まで注意しなければなりません。

産前産後休業期間中の社会保険料免除に関して   [ 2014.08.09 ]

① 産前休業とは

労働基準法65条1項において、「6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合には、その者を就業させてはならない」、と定められているため、出産前の従業員を休ませる期間を産前休業と呼びます。

産前6週間の期間の計算は、出産予定日を基準とすることから、出産が予定日より遅れた場合は、その延長された期間も産前の休業期間に含まれます。

② 産後休業とは

労働基準法65条2項において、「産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない」と定められているため、出産後の従業員を休ませる期間を産後休業と呼びます。

上記、①②を合わせて「産前産後休業」と呼び、

平成26年4月から、「産前産後休業」をした方は育児休業期間中と同様に、社会保険料納付の免除を受けることができるようになりました。

・対象者

平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了となる方(平成26年4月分以降の保険料)が対象となります。

・対象期間

産前42日・産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間の保険料が免除されます。

・必要な手続き

産前産後休業期間中に、「産前産後休業取得者申出書」を提出する必要があります。

この制度は、平成26年に始まったものであるため、申請手続きを忘れないように注意してください。出産・育児に関するこれらの手続きや情報提供等バックアップ体制を整えることは、ワークライフバランス実現や次世代育成のためにも重要です。

国民健康保険+厚生年金という組み合わせの社会保険   [ 2014.03.12 ]

法人事業所、および、常時5人以上の従業員を雇用する事業所は強制的に「協会けんぽ等健康保険と厚生年金保険」=いわゆる社会保険が適用されます。従って、これらの事業所に勤務する場合には、本来は厚生年金にのみ加入することはできません。しかし、例外的に健康保険の適用除外申請を提出し、認可が下りれば厚生年金にのみ加入出来るケースもあります。

健康保険の適用除外申請が出来るのは、個人事業としてすでに国民健康保険組合に加入していて、法人成りをするケースです。この場合には、所属する国民健康保険組合から証明をもらった申請書を管轄の年金事務所へ提出します。承認が得られれば、「国民健康保険+厚生年金」のセットで加入が出来ます。

国保と健保は、それぞれ特徴があります。

健康保険は保険料が高い分、手厚い給付が受けられます。一方、国保組合運営の国保は、保険料が安く、従業員の保険料を会社が折半負担しなくてよいなどのメリットがあります。

<健康保険の特徴>

・保険料は給料に応じて変動する。高い。

・毎年改定される。給与変動に伴う改定もある。

・傷病手当金、出産手当金がある

・会社を辞めた後の任意継続制度がある

・健保組合の場合、上乗給付がある場合があり、給付が手厚い

<国民健康保険の特徴>

・保険料は保険者(市町村)の財政に左右される

・国保組合は保険料が安く、市町村は高い傾向にある

・傷病手当金と出産手当金がない。健保に比べると給付が少ない

市区町村が保険者の国民健康保険に加入している場合は、「協会健保健康保険+厚生年金保険」に加入しなければなりませんが、現在国保組合に加入しているのであれば、保険料が安い傾向にあるので、適用除外申請を検討してみても良いでしょう。

また、給付内容が健保と国保では違うため、適用除外申請を行う際は、社員へ国保組合へ引き続き加入することの説明を行いましょう。

拡大された社会保険の同日得喪   [ 2013.03.06 ]

拡大された社会保険の同日得喪について

改正高年齢者雇用安定法の施行に合わせて、社会保険の取り扱いの通達が発出されました。

社会保険の同日得喪とは

社会保険の保険等級・保険料改定の原則は以下の通りです。

 社会保険の取り扱いでは、基本給等の昇降給により、給与額の大幅な変動に伴って、一定の要件に該当したときには、変動月から3か月の給与総額を平均した額により、4か月後に標準報酬月額変更(保険等級・保険料の見直し)をすることになっています。

まず前提として、上記の原則が法令で定められています。

 

【平成25年3月31日までの特例】

 60歳~64歳までの老齢厚生年金を受け取る権利がある方が、定年等で退職後継続して再雇用される場合には、使用関係が一旦中断したものとみなし、社会保険の被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を再雇用日に合わせて提出することができるとされています。これにより4か月後の標準報酬月額変更に該当することを待たずに、標準報酬月額を引き下げることができます。これを社会保険の同日得喪といいます。

 

【特例による効果】

①   この特例による効果は、再雇用により給与が下がると同時に保険料も下がるため、負担の軽減・
   適正化が即時に行われる。

②   在職中の老齢厚生年金は、毎月の標準報酬月額により、支給調整がかかるため、標準報酬月額
   が即時に下がることにより、老齢年金の支給停止解除または支給停止額の軽減が即時に行われる。

 
  【つまり】同日得喪を使えるということは、給与が下がった場合、大きなメリットがあります


これは老齢年金受給者の就労意欲の促進と受給権の保護を目的とした特例的な取り扱いです。企業としても、従業員と同額の社会保険料負担をしておりますので、特例による効果は大いに活用できるところです。


【平成25年4月1日以降の取り扱い拡大】

 今回「嘱託として再雇用された者の被保険者資格の取り扱いについて(通知)」の一部改正について(通知)と題して発出された通達では、下記の変更がなされています。

●これまで、特例の対象となる被保険者の範囲を60歳~64歳までの老齢厚生年金を受け取る権利がある被保険者としていたところを「60歳以上の者で、退職後継続して雇用される者」に拡大されました。

 

通達の改正に至るにはいくつかのポイントがあります。

①   平成25年4月から特別支給の老齢厚生年金の支給年齢が段階的に引き上げられることになる。

②   高年齢者雇用安定法の施行もあり、60歳以上の多くの被保険者が継続雇用されている。

 
もう少し中身をかみ砕いてみましょう。

①   について、60歳定年がまだまだ一般的なことを鑑みると、再雇用された際に給与が大幅に減額さ
   れても、60歳時点で老齢厚生年金の受け取る権利のない被保険者は、給与が低額になるにも関
   わらず、4か月後まで社会保険料は従前の高いままの状態が発生することとなる。当面、老齢厚生
   年金の支給もないため、手取り収入も激減する。これを解消する。

②   改正高年齢者雇用安定法の施行により、今後ますます高齢者雇用が浸透してゆくことに鑑み、こ
   れまで対象としていなかった65歳以降の被保険者についても同日得喪の取り扱いを拡大する。

 

今回の改正により、60歳以上の従業員(役員を除く)の給与額を見直す都度、この同日得喪の特例利用を検討できることになります。以上、参考にしてください。


厚生年金の長期加入特例について   [ 2012.11.21 ]

「老齢厚生年金の長期(44年)加入者特例について」 

 

顧問先のA社は、労務管理に造詣が深く、早くから老齢厚生年金・高年齢雇用継続給付を活用した高齢者雇用のプランをデザインされた事業所です。 

先日、とある大手企業を定年退職されたW氏を採用しました。

 W氏は中学卒業以来、定年退職を迎えるまで、45年間ひとつの会社で勤め上げた熟練工です。

 

ここ数年の間に定年を迎えた男性は、60歳から報酬比例部分(厚生年金加入時の給与に対応する部分)の老齢厚生年金が支給されますが、定額部分(老齢基礎年金に相当する部分)の老齢年金は65歳になるまで支給されない制度になっていることは、雑誌・新聞などでも紹介されることが多いので、ご存知の方も多いと思います。

ただし、60~64歳までの老齢厚生年金には特例があり、44年以上厚生年金に加入していた方については、その方が会社を退職したり、短時間労働者になって厚生年金の被保険者でなくなったときには、65歳に到達する前であっても定額部分(老齢基礎年金相当部分)の老齢厚生年金が受給できる定めがあります。

 

Wさんは、この制度を利用して、長きにわたり勤め上げた会社を定年退職した際、継続雇用や再就職を選択せず、いったん職業生活を引退し年金生活者として、長年の疲れをいやしつつ「命の洗濯」をされていました。

失業保険に関しては、老齢厚生年金と同時に受給ができないため、この特例による老齢厚生年金の金額が失業保険の金額より高かったので、年金受給を選択していました。

 

しばらくは、悠々自適に余暇を楽しみながらシルバーライフを満喫されたそうですが、そこは、45年間ひとつの会社で休みなく働き続けたW氏。元来働き者で、今までつちかってきた熟練工としての技術を活かしながら、楽しみながら働きたい・・・という希望が湧き上がり、ご紹介によりこのたびA社へ短時間嘱託社員として入社する運びとなりました。

 

厚生年金保険の被保険者とならない短時間労働者の場合、長期加入特例は継続して有効です。給与の設定金額、手取り収入のシミュレーションをしてみて、あらためて効果のほどを実感しました。

 

なぜなら、通常の年金受給者と比べて、年間120万円、65歳までの5年間で600万円近くの年金を上乗せして受け取れるからです。

 

内訳は「定額部分年金(老齢基礎年金相当)80万円、配偶者加給年金額40万円」といったものです。

120万円といえば、パート主婦が相当時間勤務して、1年間に支給される給与額に近いものがあります。

年金制度を熟知して活用し、カラダに優しく、職業経験を最大限活かしながら、生き甲斐として楽しみながら働く・・・・高齢者雇用のひとつのお手本を見るようです。

 

前述のように、定年退職時に失業保険を受給していないので、要件に合えば雇用保険から毎月の給与額に対して15%の給付金が補填される「高年齢雇用継続給付金」制度も活用できると思います。

 

改正高年齢者雇用安定法とのカラミもあり、今後は厚生年金被保険者44年長期要件を満たす高卒従業員が多数出てくるものと思われます。

高卒でほとんど切れ目なく働いてきた場合、62歳時点で44年厚生年金加入実績ができると、今回同様に制度活用が可能になるでしょう。

 

会社の事情、本人の健康状態等、諸事情により、すべての方がこの制度を活用できるわけではありませんが、制度を知っていれば選択肢が増え、労使お互いにメリットのある雇用契約が締結できるかもしれません。

 

以下、制度について記載します。参考にしてください。 

 

 

 

【厚生年金保険の長期加入特例】

[1]60代前半の老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「定額部分」から成り、以前は60歳から両方とも受

    け取れました。

しかし、法改正により定額部分の支給開始年齢が徐々に引き上げられ、昭和24年4月2日以降生まれ

の男性、昭和29年4月2日以降生まれの女性は、報酬比例部分のみ受けることになっています。

 

[2]長期加入特例とは

例外的なケースがあります。

厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある「長期加入者」については、60歳から64歳の間で老齢

厚生年金の支給開始年齢に到達していれば「報酬比例部分」と「定額部分」の両方が支給されます。

ただし、下記の要件がありますので、注意が必要です。

 

『長期加入特例の条件』

①     厚生年金保険の加入期間が44年(528月)以上あること

②     厚生年金保険の被保険者でないこと(44年以上加入者であっても、厚生年金保険に加入して

在職している間は、この特例は適用されません)

③     老齢厚生年金の支給開始年齢に到達していること

※     ②については「みなし退職」として、厚生年金保険に加入して働いていないということも可。

             すなわち、社会保険(厚生年金)に未加入で、短時間パートなどの働き方をしていても良い。

 

[3]長期加入特例の効果

①     定額部分の年金額が支給される・・・約79万円

②     要件に該当すれば、加給年金額も支給される・・・配偶者加給年金額 約39万円

 

イメージ図(Wさんの事例)


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