2016年7月
経歴詐称を防ぐには [ 2016.07.28 ]
中途採用において、採用されたい一心で応募者が経歴を詐称していた、というケースは少なからずあるようです。
早めの段階で見抜くことができればよいですが、採用してしばらく経ってから発覚した場合のダメージは少なくありません。
応募者に求められる姿勢
労働契約は、入社してから退職するまでの長い期間にわたり継続しますから、会社と社員との間には信頼関係があることが前提です。このことから、応募する側は、労働契約を結ぶ際には信義則上真実を伝える義務を負っていると考えられます。
採用する側ができる予防策
各種資料や面接での質問を組み合わせながら、応募書類だけに頼らない選考を行いましょう。例えば、学歴が給与の査定において重要視されるのであれば、卒業証明書等を事前に用意するよう応募者へ伝えることができます。職務上の地位(管理職経験の有無等)については、前職の退職証明書を用意させたうえで、業務上の経験を詳しく質問することで、自ずとその人物について判断できるでしょう。
賞罰欄については、詐称があると会社にも大きな影響が出かねません。面接の際、「賞罰欄には何も書いてありませんが、前科等は特にありませんか」等の質問により、相手の発言を促す、自社の応募フォームで、「賞罰等」がない場合は「ない」と記入させる等も有効な方法です。
経歴詐称に対する対応策
入社前に発覚したのであれば、経歴詐称があっても採用を断れば事足ります。
内定後、入社後に経歴詐称が発覚した場合には解雇できるとは限りません。業務や給与体系との関連性で重大な経歴詐称(もし真実の経歴を伝えていたら、会社側としては採用しなかったといえるくらい重大な詐称)に当たるかどうか、個別に判断されます。
内定前、入社前の段階で、経歴詐称を見抜き、採用を防止するのが最善な手段といえるでしょう。
給与からの天引きについて [ 2016.07.19 ]
従業員に支払う給与を計算する際、税金などを"天引き"して、金額を決定します。その天引きには、どのような法的根拠やルールがあるか、きちんと押さえておくと、トラブルの防止に役立ちます。
法定控除について
まず、法によって納付が義務付けられているために、会社が労働者の了解を得ることなく天引き(控除)することが認められている費用があります。「法定控除」と呼ばれるものです。具体的には、以下の3項目があげられます。
・税金(所得税、住民税)
・社会保険料
・雇用保険料
これらは公的な制度であることが知られていますから、特に問題視している方はいないでしょう。
法定外控除について
注意したいのが、法定控除以外の名目で給料からの天引きを行う場合です。これについては、その内容を労使協定で定めておかなくてはいけません。労使の合意なしにレクリエーションのための親睦会費などを、勝手に天引きすれば違法行為となります。天引きする内容も、従業員の福利厚生に資するものに限られます。
親睦を深めることを目的とした社員旅行を計画し、その準備の一環として、積立金を控除する場合などは、問題ないでしょう。その一方で、業務上必要な備品や研修にかかる費用などは、原則として会社が負担するものと考えられているので、注意が必要です。
労使協定を結んでおくことは大前提ですが、新入社員や中途入社をする社員に向けて、入社手続きなどの折に、きちんと周知しておくことも重要です。天引きされている費用の内容・性質を、労使とも理解しているよう努めたいものです。
採用面接時に健康状態や病歴を聞いても良いか? [ 2016.07.13 ]
会社が従業員に健康で長く勤めてもらいたいと考えるのは当然であり、応募者の健康状態は採用時に確認しておきたいことの1つです。
近年では、うつ病等のメンタル不調による長期休職や頻繁に欠勤を繰り返す等、思うように勤務できないケースも増えてきていますので、ますます関心が高まるところでしょう。
健康状態や病歴は聞いても良い
結論から述べると、応募者に健康状態や病歴について聞くことは、違法ではありません。職業安定法第5条4では「社員を募集するにあたって、業務の目的の達成に必要な範囲内で個人情報を収集することができる」と定めてあり、健康状態も必要な情報の一部とされます。
個人情報保護法との関係
応募者に健康状態を聞く事は個人情報保護法という法律に抵触しそうですが、これは収集した個人情報を「どのように管理するか」を制限する法律で、情報を収集する行為に制約をつけるものではありません。ただし、「プライバシーだから答えたくない」という回答や書面に記入してもらえなかった場合、「記入しないと不採用にするぞ」といった回答を強制する発言や行為はトラブル防止の観点から避けた方が賢明です。
メンタル面での病歴について
メンタル面での病歴は、慎重な聞き方をする必要があります。通常の健康診断結果だけではメンタル面の不調を読み取ることは難しいので、過去数年の間に通院したことがあるか、ある場合には疾病名を記入してもらう等、補助的な確認書類の提出を求めて把握しましょう。
応募者の健康状態を聞く事は心理的に抵抗があるかもしれませんが、聞くことそのものは違法でないので、その結果も踏まえたうえで会社にとって求める人材を採用しましょう。
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